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制度改革

「働き方のニューノーマル」を築き続ける、
SAPジャパンの大胆な変革の礎にあるものとは

2022.11.21

SAPジャパン株式会社「働きやすさ」インタビュー
多様な文化を大切しているSAPの働きやすい職場環境の充実を目指した先進的な取り組みについて

1972年にドイツで創業した企業向けソフトウェア企業のグローバルリーダーであるSAP。SAPのお客様は世界の商取引の87%を担っているといわれています。
世界各国で約11万人の社員が働くSAPでは、多様性を尊重する文化を大切にし、働きやすい職場環境の充実を目指して先進的な取り組みを大胆に取り入れることで知られています。

2021年には従来の働き方とは大きく異なる柔軟な働き方「Pledge to Flex(プレッジ ・トゥ ・フレックス)」を導入し、大きな話題となっています。1992年に日本法人として設立されたSAPジャパンで現在、人事部門を統括する石山恵理子常務執行役員人事本部長に、SAPが考える「働きがいのある職場」についてうかがいました。

社員一人ひとりが働きやすい環境を選択できるPledge to Flex

SAPジャパン株式会社 新オフィス
SAP本社が2021年6月に、そしてSAPジャパンが2022年1月から導入された柔軟な働き方
「Pledge to Flex」とはどのようなシステムでしょうか?

Pledge to Flexは「Flex Location(勤務地の柔軟性)」「Flex Time(働く時間の柔軟性)」「Flex Workspace(働く場の柔軟性)」の3つを軸にし、ビジネスニーズが許容する範囲で、社員がそれぞれのニーズに合った働き方を柔軟に選択することで、心身の健康を保ち、働きがいを高め、ベストパフォーマンスを発揮することをめざす新しい働き方です。

Flex Locationではコロナ禍の中で自宅でのリモートワーク経験を活かし、今後もリモートワークを多様な働き方の一つとして継続し、要件を満たした場合は所属する事業所の通勤圏外(国内)からのテレワークも可能としています。
またFlex Timeはマネージャーやチームとの連携により、週の稼働日を調整する働き方も取り入れることで、社員一人ひとりがライフスタイルに応じた働き方を実現できるよう支援しています。

Flex Workspaceではオフィスを単なる就業スペースから、リモートワークと両立し、社員同士のコラボレーションや新しいエコシステムを作り出す場と捉え、それを具現化する場として2022年9月に東京・大手町本社に新オフィスをオープンしました。
ニーズに応じて柔軟に利用できるレイアウトや、従業員の心身の健康をサポートする環境づくり、出社している社員を検索できるアプリの導入、社員同士のコミュニケーションを促進する担当者の新設など、働きがいを高めるさまざまな取り組みを行っています。

SAP様の従業員調査で8割の方がPledge to Flexを希望していたと伺いました。その一方で、人事視点からすれば生産性はどうなのか?という部分も気になります。
Pledge to Flexを導入された背景にはどのような考えがあったのでしょうか?

大きなきっかけは、やはりコロナ禍です。それまでは社員の勤務形態について、各国の商慣習や労働法に基づいて決めており、SAPグローバルとして統一した考えはありませんでした。ところがWHOがパンデミックを宣言した後、コロナという見えない危機に対してSAPグローバルで考え方を共通にし、協力しあって危機を乗り越えようという体制になったのです。

まずは全世界的に自宅での勤務を基本とし、コロナ対策をしながらいかにお客様へバリューを提供し続けられるかというところから始まりました。
もともと私たちはデータの収集と、検証により経営をサポートしていたのでコロナ禍においてもさまざまな従業員調査を行ったのですが、そのなかで「自宅勤務が長引いているが心身の健康状態はどうか」「生産性は落ちてないか」という問いを社員に投げかけました。

コロナ禍の初期段階では将来に対する不安やメンタルヘルスへの課題などが見えましたが、意外なことに生産性は落ちませんでした。そのうち社員も新しい働き方に適応していき、調査のなかで「コロナが収束しても自宅勤務を継続してほしい」という意見が次第に多くなっていきました。
コロナがどう収束するのかまだ見えていませんが、私たちは新しい働き方を考えていく必要があるということで、SAPグローバルで検討されることになりました。

100%リモートワークにすると、生産性は落ちないもののメンタルヘルスにある程度の影響を及ぼすということが、これまでの調査でわかってきました。
そこで、自宅から勤務をする時もあるし、オフィスで他の社員とコラボレーションする時もあるというハイブリッドな働き方を実現することが、生産性を担保できて心身ともに健康状態を維持するウェルビーイングにも良い影響が出るということから、2021 年6月にSAPグローバルから「Pledge to Flex」が発信されました。

柔軟な働き方というのは、あくまでビジネスやお客様が許容する範囲が大前提で、なんでも自由にしてよいということではありません。私たちはプロフェッショナル集団なので、お客様や世の中に貢献することを第一としながら、最も適切な働き方の選択肢を社員が自ら選ぶという形です。
ただ、これまでにない新しい働き方ですので、社内でさまざまなワークショップや説明会を実施してコンセプトを理解していただきさまざまなメディアを使って考え方が浸透するようにしている状況です。

社員の声をデータ化して経営に反映

Pledge to Flexを導入したことで、社内の反応はいかがでしょうか?

SAPでは年に2~3回、従業員に対して満足度調査を行い、全世界共通の質問項目で声を拾っています。特に注目しているのが従業員の働きがいを表す「従業員エンゲージメント」と、リーダーに対する信頼性を表す「リーダーシップトラスト」。いずれも信頼関係のなかでビジネスが進行できているかという指標として、とても大切にしている項目です。

Pledge to Flexについても「信頼性を確立した上で実行していきましょう」というのが基本的な考え方にあります。例えば、誰がどこにいてどのように働いている、といったことをテクノロジーでチェックすることは可能です。
ですがそれをするのではなく、「あなたを信頼しているので、働きやすい方法を選択することでよいパフォーマンスを発揮してください」というのが基本的な姿勢です。私たちは「信頼をベースにしたPledge to Flex」と呼んでいます。

ただ国によっては始業と終業を記録として残すことを法的に求められるところもあれば、完全に信頼ベースで実施してよいというところ国もあります。そこで「信頼をベースにした」というコンセプトが各国の労働法的に許容なのか調査し、国ごとに導入方法を精査し、就業規則の見直しも行いました。
世界中の同僚と議論しながら日本のやり方を模索する作業は苦労もありましたが、約120名のマネージャーの協力を得て日本では2022年の1月からスタートしました。

その後、2022年4月末~5月頭にかけて行った従業員満足度調査を見ると、従業員エンゲージメントと、リーダーシップトラストの指標が上がるという結果になりました。Pledge to Flexがどこまで数値に影響しているかはわかりませんが、少なくとも悪い影響は出してないということがスコアに現れていると思います。

またPledge to Flex の一環として、2022年9月に新オフィスがオープンしました。オフィス内にはさざ波のような音が流れ、オフィスの外にも室内にも自然があふれています。物理的にそのような環境に身を置くと本当にリラックスできますし、コロナ禍で会えなかった人たちと対面で会い、コミュニケーションを促すような心地よい施設です。
社員はここに出社することで会社に所属している安心感や一体感を感じているのではないでしょうか。それがよい影響となって、これから数字として表れてくるのではないかと期待しています。

働きやすさを追求する先進的な取り組み

SAPジャパン株式会社 「働きがい・働きやすさ」の取り組み
Pledge to Flex以外に、これまで行ってきた「働きがい・働きやすさ」の取り組みについて具体的に聞かせください。

私たちはDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)と呼んでいるのですが、ジェンダー、ジェネレーション、グローバルカルチャーにフォーカスして、多様性を受容して活用することで働きがいのある職場としての良さが高まり、ひいては業績によい影響を及ぼすという取り組みです。

例えばジェンダー。職場における女性比率を高めていこうという取り組みを行っていて、特に女性マネージャーの比率増に注力しています。
報酬や登用といった面で男女不平等が起こらないようチェックすると共に、女性を含めたマイノリティの人たちに対して無意識のバイアスがかからないよう、男性管理職を中心に研修を行っています。LGBTQの取り組みについても、社外機関から「最もLGBTQに取り組んでいる会社」の1つとして認定されています。

またジェネレーションでは、5つの世代が組織の中に存在しているということが我々の強みだと言えます。特に日本では少子高齢化で若手の登用が課題になっていますが、若手社員を積極的に採用して登用していくということも行っています。

SAP Talkという独自の人事評価を採用されているということですが、こちらはどのような制度なのでしょうか?

SAP Talkは「レーティングを行わない、対話によるパフォーマンス・マネジメント」と言っているのですが、2017年から導入している制度です。これまでは5段階など点数で評価することに重きが置かれていましたが、人間は点数をつけて叱咤激励されても成長意欲の向上に繋がりにくいということが脳科学の分野の発展とともにわかってきました。
点数が成長意欲を阻害するなら、点数をつけること自体をやめ、より社員の成長意欲が増すような対話を重ねることでパフォーマンスを高めようという考えです。

例えば営業職の場合、年間どのくらい売上を達成しているかという数値は見ますが、100%達成したら5点、50%だったら3点といったように点数をつけるのではなく、マネージャーが頻繁にコミュニケーションを取ることで成長と改善を促し、パフォーマンスの大きさ高さを評価します。昇給は、社員の現在の報酬に対して市場のデータをベンチマークしながら決めていきます。

よいパフォーマンスをしている社員に市場価値にみあった報酬を支払うことで、会社への忠誠心とモチベーションを引き出そうというのがこの制度です。以前は評価期間が終わると、評価に対する不満が必ず人事部に上がってきていましたが、SAP Talkを導入後はそうした相談の件数が格段に減りました。社員のみなさんが質の高いコミュニケーションと納得のいく昇給を享受しているのではないかと思います。

変化に適応できる強い組織づくり

SAP様は事前調査やデータに基づいて施策を大胆に実行されていますが、
その背景には常に「信頼」という重要なキーワードがあるように感じます。

そうですね。私たち人事は社員のみなさんを信頼し、透明性を担保することを重視しています。例えば、ビジネスに関する情報は社員に対してタイムリーに共有されます。また従業員調査のスコアは、社員に全て公表しています。給与のレンジについても社内公開していますので、社員は自分の給与がレンジのどこに位置しているかを確認できるようになっています。
そうすることで、ビジネスがどのような方向に向かっているのか、リーダーたちはどういう風に考えているか、自分は今どのような位置づけにあるのかといったことを社員が把握することができます。

我々のようなテクノロジー企業は、今回のコロナやウクライナなどのように社会情勢が変わるとビジネスに多大な影響が出ます。過去にはそのたびに戦略が大きく変わり、痛みを伴う時もありました。しかし、過去のやり方ではコストがかかる上に社の評判も下がり、マイナスの影響しか出ませんでした。

今のSAPが透明性を重視する背景には、そうした過去の経験があります。会社の方針、人事制度の変更など、会社の重要事項をタイムリーに社員に共有することによって、社員は自分で考え、変化に適応できるよう成長しようとします。もしあるビジネスが収束し、新しいビジネスが立ち上がったとしても、社員が新しいビジネスへとスムーズに移行できれば会社として失うものは無いわけです。

会社と社員がお互いに好循環していく、有機的な組織というのでしょうか。個々が常に成長しながら、変化のスピードに対応できる柔軟な組織をめざしていきたいと思っています。

SAPジャパン株式会社
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取材日:2022.09.15