なぜホテル業界は離職率が高いのか?現場のリアルと定着率を高める対策
- 採用強化
- 採用課題
- 離職防止
2025.08.17
宿泊業や飲食サービス業は、厚生労働省の統計でも離職率が高い傾向にあります。
ホテル業界も例外ではなく、新卒や中途を問わず早期離職するケースも見られます。
そのため、ホテル業界では採用ニーズが高く、人材の確保が大きなテーマです。
せっかく採用しても、定着につながらなければ採用負担が重くなります。
現場の人員不足にも直結し、結果としてサービスの質にも影響する場合があります。
では、なぜホテル業界では離職率が高まりやすいのでしょうか。
本記事では、最新の動向を踏まえながら業界の実情を整理します。その上で、離職を防ぐために企業が取り組める対策もご紹介します。
第1章:ホテル業界の離職率の実情と最新動向
ホテル業界は「人の入れ替わりが多い」といわれることがあります。実際にどの程度の水準なのか、統計を基に見ていきましょう。
公的データから見る離職率の水準
厚生労働省「令和6年上半期雇用動向調査」によれば、宿泊業・飲食サービス業は全業種の中で離職率が高い水準にあります。
新卒者の場合、就職から3年以内に離職する割合はおよそ5割にも達しており、こちらも全業種平均と比べるとやや高い水準であるとみられます。
※出典:令和6年上半期雇用動向調査結果の概要「産業別の入職と離職の状況」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/25-1/dl/kekka_gaiyo-02.pdf)
※出典:厚生労働省HP「新規学卒就職者の離職状況」(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00007.html)
コロナ後の需要回復と人手不足の影響
近年は、コロナ禍の反動による宿泊需要が増加傾向にあります。
しかし、人手不足が長引くことで、現場の負担が大きくなっているケースもあります。
こうした状況は離職率に影響することがあり、採用と定着の両面での対策が求められているといえます。
ホテルの種類・地域による離職率の違い
ホテル業界と一口にいっても、都市型ホテル、リゾートホテル、ビジネスホテルなど業態はさまざまです。
また、企業規模や地域特性によっても離職率には差があります。
「ホテル業界全体で離職率が高い」と一括りにできるわけではありませんが、全体として定着しにくい傾向にあります。

第2章:ホテル業界で離職率が高くなりやすい主な7つの背景
ホテル業界は、働き方や職場環境が企業ごとに大きく異なります。
その前提を踏まえた上で、一般的によく挙げられる背景を整理します。
1. 入社前と入社後のイメージの違い
求人情報や会社説明会で得た印象と実際の業務内容に差があると、仕事への感じ方に変化が生じることがあります。
例えば
- 「接客が中心だと思っていたが、裏方業務も多いと知った」
- 「語学力を活かせると思っていたが、体力的な作業の方が多かった」
など、このような想像と現実のギャップは入社後の戸惑いや不安につながることも。
特に初めてホテル業界で働く場合、仕事の全体像がつかみにくいため、モチベーションを維持しづらいこともあります。
こうした差を縮めるには、入社前に現場の雰囲気や業務内容を具体的に伝えることが有効です。
写真や動画、社員の声などを通じて、リアルな働き方を理解してもらうことで、入社後のギャップを減らすことが期待できます。
2. シフト勤務や勤務時間の負担感
ホテルは24時間体制で運営されるため、早朝や深夜勤務が発生することがあります。
繁忙期には業務量が増えることもあり、生活リズムの調整に工夫が必要です。
長時間勤務が続くと、体力的な負担を感じる社員も多いでしょう。
社員に無理なく働いてもらうためには、シフトの工夫や業務の分担など負担を軽減する取り組みが重要です。
3.休日・休暇の取りづらさ
観光ピーク時といった時期は休みを取りにくいホテルもあります。
そのため、家庭との両立が難しいと感じる人もいます。
適切に休める環境は、安心して働くために欠かせません。
休暇の取りやすさは、定着にもつながる大切な要素といえます。
4. 給与水準の課題
ホテル業界では、初任給がほかの業種より控えめになることがあります。
例えば、役職に進むまでに時間がかかる場合もあり、収入面の伸びを実感しにくいことも。
業務量とのバランスに悩む声が上がることもあり、勤務時間や業務量の調整、評価や昇給の仕組みを整えることが求められています。
5. 業務量の多さ
ホテルスタッフの業務は、チェックイン対応、予約管理、客室案内、清掃調整など多岐にわたります。
インバウンドの増加で語学対応や問い合わせ対応が増えることもあります。
その結果としてマルチタスクが求められ、負担を感じやすい場面もあるでしょう。
適切な分業や仕組みづくりは、働きやすさに影響します。
6. キャリアパスを描きにくい構造
ホテル業界では、スタッフからマネージャー、さらに支配人へと進むキャリアパスがあります。しかし、昇進や評価の基準が明確でない場合、社員が将来を具体的にイメージしにくいことがあります。
特に中途採用者や第二新卒にとっては、自分の経験やスキルがどのように評価されるのか気になるポイントです。
長期的な成長や将来的なキャリアプランが描きにくいと「自分の成長はこの職場で実現できるのか」と不安に感じる場合があります。
7. サポート体制や職場環境の課題
ホテルの現場はチームで業務を回すことが多いため、教育やフォローが十分に行き届かない場合、特に新人は不安を抱きやすくなります。
また、職場で相談できる体制が整っていないと、安心して仕事を続けるのが難しいと感じる社員もいるでしょう。
メンター制度や研修制度を充実させるといった取り組みは、社員の満足度向上や定着率改善に役立つことが期待できます。
背景を踏まえた今後の視点
ホテル業界では、インバウンド需要の回復が続き、業務量が増えやすい状況にあります。受付対応だけでなく、多言語コミュニケーションや問い合わせ対応など、求められるスキルも幅広くなる傾向があります。
一方で、人手不足は長期化しており、限られた人数で業務を回す工夫が求められています。
こうした状況では、業務の効率化や負荷の分散が、社員の働きやすさにつながりやすいといえるでしょう。
また、ホテル運営ではDXやITツールの活用も進んでおり、予約管理や問い合わせ対応、バックオフィスの自動化に取り組む企業も増えてきました。
業務の属人化をやわらげ、負担を軽減する取り組みは、結果として定着率の改善にも寄与すると考えられます。
さらに、求職者が職場に求めるポイントも変化しています。
例えば、仕事内容の透明性、スキルを伸ばせる環境、柔軟な働き方へのニーズは以前より高まっている傾向です。
また、入社前の情報が分かりやすく提示されているほど、安心して応募しやすいという声もあります。
こうした背景から、現場の実態や働く人の声を丁寧に伝える取り組みは、採用後のミスマッチを抑えるひとつの手段として役立つと考えられます。
第3章:ホテル業界の離職率を下げるための実践的対策
ホテル業界の離職率は高い傾向があるといわれますが、職場づくりを見直すことで改善につながる可能性があります。
ここでは、多くのホテルで取り入れやすい実践的対策を整理します。
1. 採用段階での情報開示を丁寧に行う
ホテル業界の離職の一因として挙げられるのが、入社前後のイメージギャップです。
そのギャップを減らすためには、仕事内容や勤務時間だけでなく、夜勤や裏方業務など日常の流れを具体的に説明することが役立ちます。
写真や動画、社員インタビューを用いることで、働き方のイメージがつかみやすくなります。
このような応募者が安心して判断できる環境は、ミスマッチの抑制にもつながる可能性があります。
2. 労働環境の改善と柔軟な勤務制度の導入
24時間体制で動くホテルでは、働き方の工夫が重要です。
- シフトの見える化
- 有給を取りやすい制度
- 夜勤専任制や短時間勤務の導入
こうした取り組みがあると、社員は生活リズムを整えやすくなり、働き続けやすい環境に近づきます。
3. 給与体系や待遇の見直し
給与や評価への納得感も、定着に影響します。
- インセンティブ制度
- 賃金体系の適正化
- 評価基準の透明化
これらを見直して、業務量と待遇のバランスを見えやすくなることで、安心して働ける環境に寄与すると考えられます。
4. キャリアパスを明確に示す
「この先、どのように成長していけるのか」を明確にすることは、社員のモチベーションを高める上で重要です。
例えば、昇進の基準を明文化し、定期的な面談でキャリアの方向性を話し合う仕組みを整えると安心感が生まれます。
他にも資格取得支援や外部研修への参加など、学びの機会を提供することも、定着につながる有効な手段のひとつです。
5. メンター制度やOJTの強化
新人や中途入社の社員がスムーズに職場になじめるよう、メンター制度を導入するのも良いでしょう。
日常的に相談できる先輩がいるだけで、不安は大きく軽減されます。
また、OJT(On-the-Job Training)を体系的に行い、段階的にスキルを身につけられるようにすることで「成長している実感」を持ちやすくなります。これも離職を防ぐ大きな要素です。
6. 業務効率化とDX活用で負担を軽減
人手不足が続くホテル業界では、業務の効率化も重要です。
- チェックイン機
- PMS(ホテル管理システム)
- 清掃ロボット
これらの導入は、業務の属人化をやわらげ、社員の負担軽減にもつながります。ITツールは作業の自動化だけでなく、社員の心理的なゆとりを生みやすい点も特徴です。
7. 社員の声を拾い上げる仕組みづくり
現場で働く社員の声を聞くことは、離職率改善の基本的な取り組みのひとつといえます。
例えば、アンケートや定期的な1on1面談を通じて意見を集め、小さな不満や課題を早めに把握して解決につなげることが大切です。
第4章:ホテル業界の離職率改善に役立つ「VOiCE」の特徴と活用法
ホテル業界の離職率を下げるには、採用の段階で「リアルな情報」を候補者に伝えることが重要です。
仕事内容や環境のイメージが具体的であればあるほど、入社後のギャップを減らし、定着率の向上につながりやすくなります。
そのための手段のひとつとして、現場で働く社員の声を活用する方法があります。
そこで役立つのが、現職社員によるリアルな声を集められる「VOiCE」です。
VOiCEとは
VOiCEは、現職社員の声を可視化することで、離職率改善をサポートできる口コミプラットフォームです。
一般的な求人票や会社説明だけでは伝えきれない「現職社員ならではの視点」を可視化できる点が特徴です。
ホテル業界は職種・担当業務が幅広いため、現場の実情が求職者に伝わりにくい面があります。
そうした場面で、社員の声を整理して紹介することで、候補者が働くイメージを持ちやすくなる可能性があります。
VOiCEを活用するメリット
採用段階の情報透明性が高まりやすい
社員の体験談を参考にすることで、仕事内容・働き方・キャリアの実例など、多角的な情報を求職者に伝えやすくなります。
また、情報量が増えることで、入社前の不安の軽減につながる場合があります。
職場課題の早期把握に役立つ
社員の声を可視化することで、現場で感じている魅力や改善点を把握しやすくなります。
さらに、経営・人事側が職場の状況を客観的に理解するきっかけにもなり、施策検討に活かせる可能性があります。
求職者とのミスマッチ防止に活かせる
企業側が伝えている情報と、社員が感じている実感を整理して発信することで、求職者が働くイメージを描きやすくなります。
その結果、入社後のギャップを減らすことに寄与する場合があります。
VOiCE導入のポイント
VOiCEでは、現職社員に対して「らしさ診断」と呼ばれる社内アンケートを実施します。
その結果をもとに、社員が実際に感じている働きやすさや組織の魅力を整理し、候補者に分かりやすく発信できる仕組みになっています。
また、既存の採用制度や広報ツールと組み合わせることで、運用しやすくなるケースもあります。
継続的に社員の声を蓄積していくことで、職場の変化にも気づきやすくなり、改善活動にも活かせます。
まとめ:ホテル業界の離職率改善は「透明性」「成長」「働きやすさ」が鍵
ホテル業界では、勤務形態やキャリアの見通しの立てにくさなど、複数の要因が離職率に影響するといわれています。
ただし、これらは業界全体に共通する課題である一方、各社の取り組みによって改善が期待できる部分も多くあります。
中でも重要なのが、入社前後のミスマッチをいかに防ぐかという点です。
仕事内容・働き方・キャリアの見通しを、できるだけ分かりやすく伝えることで、候補者が入社後のイメージを持ちやすくなり、結果的に定着率向上にもつながることが期待できます。
そのためには、現場の声を共有できる仕組みを用意することが有効です。
例えば、社員のリアルな声を掲載できる「VOiCE」のようなサービスを活用すれば、企業側が伝えたい情報だけでなく、働く人の視点も併せて届けられ、求職者にとって納得感のある判断材料のひとつになります。
採用活動の中で「透明性」「成長機会」「働きやすさ」を丁寧に示すことが、離職率改善への大きな一歩となるでしょう。